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私たちがトトクルを開店するまでのいきさつ
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- 2022.08.28
仲卸業である井内水産が「トトクル」を開店するまでに様々な思いがありました。
一般的に、消費者に直接お魚を届けることが少ない我々が、なぜオンラインショップを開いたか。
それまでのストーリーを紹介します。
●コロナ以前から課題を抱えていた業界。改革の必要性を自覚しながらも…。
2019年末…あの出来事で世界が変わりました。
2019年12月に中国・武漢市で、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)第1例目の感染者が報告されてから、私たちの日常はもろくも崩れ去りました。
2020年明けのニュースでは、対岸の火事というよりも全くもって関心ごとでは無かったのが実情。井内水産の拠点である大阪もインバウンド景気に浮かれ、来たるべきオリンピックや万博への更なる好景気の期待に胸を躍らせていました。
まさか、あの出来事がこうも世界を変えるなんて、想像すらしていませんでした…。
その後の状況は皆様もご承知の通り。長期間の飲食店の営業制限をはじめ、人々の日常生活に大きな支障が生じ、経済活動が止まり、良くも悪くも今までの当たり前が激変しました。
様々な業種の事業者に多大な影響が及び、私たち仲卸業も卸先のおおくを占める飲食店が営業できないことで、売上げ激減どころか事業そのものがストップするに至りました。
その後、助成金などの支援はありましたが、ダメージの影響は大きく。今も尚、その回復を模索している状況です。
コロナ以前から課題を抱えていた業界。
改革の必要性を自覚しながらも…。
私たち仲卸業は、コロナ以前から課題を抱えている業界でした。いわゆる「中抜き業者」としての立場や誤解で、その存在意義が問われていました。
もちろん我々は「おいしく新鮮なお魚を届ける」という役割において自分たちの立場は社会に必要であると自負し、その使命を全うしていると自信を持っていました。
しかし、時代の移り変わりや価値観が大きく変わっていく中で、その使命や在り方を変えていかなくてはいけないという自覚はありながら、具体的な行動ができず課題の解決を棚上げしていたということは否定できません。
とくに、井内水産のような都市圏の仲卸業は、卸売市場の法改正や流通・冷凍技術の進歩により、産地から新鮮なお魚が直接、飲食店やスーパなどの小売り業、さらにはご家庭にも届けられるようになったことで、役割の一部をシェアしたり、改革を迫られる状況でした。
そんな時、コロナショックが訪れ、さらに大きな変化の渦に飲み込まれていくことになりました。
これは物語の終焉か、再生のチャンスなのか…。
コロナショックで、同業も飲食店などの卸先も、事業を継続できず廃業していった事業者が多くいました。
我が社も同じく窮地に立たされながらも、なんとか歯を食いしばり耐えています。Withコロナが当たり前になった現在もその影響は大きく、回復にはまだ道のりは遠い状況です。
しかし、コロナという出来事は負の面があまりにも大きいが故に、ネガティブなマインドに陥りがちですが、大きな視点で見ると硬直していた世の中をぶち壊し新しい世の中を想像するきっかけを与えてくれたのではないか!?
2年以上もこの状況が続いていると悲しいけれどだんだん慣れてしまい、私たちはそのように考え初めました。皆様の中でも同じことを感じている人は少なくないのではないでしょうか。
だからこそ、ポジティブなマインドで「ピンチはチャンス!」と行動する事を決めました。
もっと沢山の人に新鮮でおいしいお魚を届けたい!
その気持ちに立ち返りました。
私たち井内水産は、親子三代にわたり大阪市中央卸売市場 本場で水産物の仲卸業として営み、かつて「天下の台所」として栄えた大阪・浪速の味を支えて続けていました。
現代表の井内正幸は、寿司屋やスーパーの鮮魚売り場を経て、家業である仲卸業を継いで25年。魚の流通としては逆のプロセスで市場の世界に入ったことから、調理する魚が食べる人にとって、どのようなおいしさであるかを誰よりも考え、こだわりを持って魚を選んでいます。
「そのこだわりを、もっと沢山の人に届けたい!」
新しい時代の仲卸業としてどうあるべきか—。様々な考えを巡らせている間に、シンプルにそんな思いに立ち返るべきだという結論に至りました。
その思いを実現する具体的な方法を模索し始めたのは、2020年末頃でした。そんな折り、2021年から国のコロナ対策として「事業再構築補助金」の募集がスタートし始め、様々な人達の力を借りながら申請・採択され、新しいチャレンジを始めました。
そのひとつが、このオンラインショップ「トトクル」です。
今までの仲卸業の多くは、飲食店や小売り業などの卸先を経由して、消費者の皆様に水産物を届けていました。
もちろん私たちは直接口に入れる消費者のことを思いながら仕事をして続けてきましたが、直接皆様とコミュニケーションをする機会は少ない立場でした。
その立場の私たちが、消費者の皆様に直接お魚を届ける。
その決断に至ったのは「中抜き業者」を超えるという、損得だけで自分たちが立たされた状況と同じ事をするのではなく、消費者の立場により近い場所で価値提供ができるのか!? チャレンジしてみたいという気持ちでした。
その方法論として、まず2021年明けに大阪・豊中市に魚屋「魚まち」を開店。地元の消費者にお魚を届ける事を始め、小規模ながらもその手応えを感じ始め、その後トトクルをオープンするに至りました。
仲卸業のアップデート!
困難に打ち勝つ、ハイブリッドな水産会社に俺はなる!笑
井内水産は、単に消費者に直接販売する小売だけを始めたのではありません。
先にも書きましたが、仲卸業は新しい時代への対応が遅い業界です。その役割や使命を進化させるために改革が迫られています。
だからこそ、最終的に水産物を口に入れる消費者の皆様のできるだけ近くで水産物を提供するために小売を始めました。
しかし、それは今までの目利きした水産物をそのまま届けるだけでは、本来の役割を全うできないと思っています。
私たちは、新鮮な生のお魚を売るだけではなく、消費者の皆様が手軽に楽しんでいただけるような、水産の加工品や食料品などの商品を自分たちで作って販売していきます!
とくに、お魚を食べることが少なくなった子どもさんや、お魚の調理の手間を負担に感じている女性やお母さんに、もっと手軽に水産物を楽しんでいただく事を一番に考えています。
この新しいチャレンジは、今までの卸先というお客様を失うのではないか!?
そのような考えがよぎっていないと言えば嘘にはなります。
しかし、私たちが消費者の心を摑むことができたのなら、今までのお客様にも必ず良い影響があると思っています。
さらに考えてもみてください。井内水産は中小零細企業です。私たちの力だけでは消費者の皆様すべてに水産物を届けられる訳はありません。
私たちはこの取り組みを通じて、今のお客様とも一丸となって、よりおいしく安全な水産物を消費者の皆様にお届けできると確信しています。
まだまだ、ほんとに小さな一歩ですが「トトクル」は、やっとスタートしました。